不眠症

「眠ろうとしてもどうしても眠れない」という不眠体験は誰しも持っています。

不安なことがあるとき、緊張しているときなど原因はさまざまですが、通常は数日のうちにまたいつも通り眠れるようになります。

しかし、ときには不眠が改善せず、1ヶ月以上にわたって続く場合があり、不眠が続くと日中に倦怠感、意欲低下、集中力低下、抑うつ、めまい、食欲不振などのさまざまな不調が現れる場合があります。このように、「長期間にわたり夜間の不眠が続き」、「日中に精神や身体の不調が現れて生活の質が低下する」の2つが認められた場合、不眠症と診断されます。

不眠症は、なかなか寝付けない「入眠障害」、眠りが浅く途中で何度も目が覚める「中途覚醒」、早朝に目が覚めてしまう「早朝覚醒」、睡眠はできてもぐっすり眠れたという満足感が得られない「熟眠障害」の4つのタイプに分けられます。

原因

不眠の原因はさまざまですが、大きく分類すると次の通りです。

ストレス

過度のストレスが原因で、不眠症となってしまう場合があります。ストレスは交感神経を活発にし、副交感神経の働きを阻害します。交感神経は心身を緊張状態にする役目を、副交感神経は心身をリラックスさせる役目をもっています。そのため、ストレスが緊張感を高め、安らかな眠りを妨げてしまうのです。

身体疾患

呼吸器の疾患や消化器の疾患によって不眠症を併発している場合もあります。例えば、十二指腸潰瘍を患っていれば、腹部の痛みにより早朝覚醒や中途覚醒を引き起こしかねません。アトピー等の皮膚疾患はかゆみによる不眠の原因にもなります。

精神疾患

精神疾患が結果として不眠症の原因となっている場合もあります。神経症や精神分裂病、うつ病などの精神疾患は、不眠をよく引き起こします。特にうつ病は不眠を併発することが多く、その関係性は非常に密接なものとなっています。

薬や刺激物

治療薬が不眠をもたらすこともあります。睡眠を妨げる薬としては降圧剤、甲状腺製剤、抗がん剤などが挙げられます。また抗ヒスタミン薬では日中の眠気が出ます。コーヒー、紅茶などに含まれるカフェイン、たばこに含まれるニコチンなどには覚醒作用があり、安眠を妨げます。カフェインには利尿作用もあり、トイレ覚醒も増えます。

生活リズムや環境

不規則な生活によって体内リズムが乱れると不眠をもたらします。また騒音や光が気になる、寝室の温度や湿度が適切でないといった理由で眠れないというケースも見られます。


症状

症状別に大きく4つのパターンに分けられます。

入眠障害

なかなか寝付くことができないというパターンの不眠症です。この症状に悩まされている患者さんが最も多く、「早く寝ないと明日に響く」と考えてしまうことで、より深刻な不眠症になってしまうこともあります

中途覚醒

眠りについたにもかかわらず、頻繁に目が覚めてしまう症状です。生活リズムの乱れや飲酒やストレスなどが原因になることがあります。

早朝覚醒

朝早くに目が覚めてしまい、その後眠ることができないという症状です。年配の方が早朝に目が覚めてしまうというのは、加齢とともに睡眠パターンが変化しているだけで早朝覚醒には該当しないことがあります。

熟眠障害

 十分な時間眠っていたはずなのに、起きてみるとすっきりしなかったり、疲労感が残ったままだったりする症状です。日中に睡魔に襲われることが多い人は、熟眠障害の疑いがあります。

治療法

先に挙げた原因を特定し、それを取り除くことが一番の治療法ですが、自分なりの安眠法を確立することも効果的です。一般的な安眠のための工夫を紹介します。

  1. 就寝・起床時間を一定にする
  2. 睡眠時間にこだわらない
  3. 日光を浴びる
  4. 適度な運動をする
  5. 自分流のストレス解消法を持つ
  6. 寝る前にリラックスタイムを設ける
  7. 寝酒はしない
  8. コーヒーなどの刺激物を遠ざける
  9. 快適な寝室作りをする

専門医の治療を受け、適切な対処をしてもらうのも非常に有効なことです。

不眠症にはさまざまな原因が考えられ、素人ではそれを特定できないことも多いため、間違った対処法を続けていても不眠症は改善されません。

投薬やカウンセリングは効果的なことが多く、クリニックを受診して不眠について相談するだけでも不眠恐怖は和らぎます。大切なのは眠れないことを一人で考え込まないことです。

その心配する気持ちそのものが不眠を悪化させるだけではなく、心身に悪影響を与えてしまいかねません